一件のLINE
『お前の恋人、無防備すぎ』
なんて。
幼馴染からの一件のLINE。
しかも、写真付き。
送られてきた写真は、俺の恋人が幸せそうな笑顔で、幼馴染に抱きついているところで。
それを自撮りして送ってきたみたいだった。
俺の恋人と俺の幼馴染と、俺の三人は同じ高校の同級生で。
今は俺だけが違う大学に通っていて。
恋人と幼馴染は今日、大学のサークルの飲み会だったらしく。
完全に酔っている恋人が、幼馴染に絡んだのだろうけど。
当然、そんなの面白くない。
俺以外の男に簡単に触れさせないでほしい。
なんて、無防備な恋人に対しては心配になるし。
見せびらかすようなLINEを送ってきた、幼馴染には苛立ちが募って。
俺は。
『どこにいるの?すぐ、そっち行く』
と、幼馴染に飲み会の場所を聞き出し。
急いで、恋人を向かえに行く。
「あ、やっとホンモノが来てくれたぁ」
なんて。
俺が行くと、酔った恋人の彼がふにゃりと笑って。
俺へと両手を広げてくるから。
「もう、飲み過ぎだよ。君、お酒強くないんだから」
本当はもっと、注意したい気持ちがあったけど。
ご機嫌で笑う彼が可愛くて、俺は思わず抱きしめてしまう。
「おっせぇーぞ。ホンモノの彼氏サン」
こいつ、ずっとお前の名前呼んでたんだぜ。
何かムカついたから、写真送ってやったんだ。
と、幼馴染がお酒片手に言う。
どうやら、あの写真も、酔った恋人が幼馴染と俺を間違えて抱きついてのことらしい。
……そうか、てことは写真の、彼のあの幸せそうな笑顔は、俺に向けられたものだったのか。
「顔、ニヤけてるぞ」
キモい、なんて。
幼馴染に冷めた視線を浴びせられるけど。
嬉しいんだから、しょーがないだろ。
今もニコニコとご機嫌で、俺の腕に自分の腕を絡めて離さない、可愛い恋人。
そんな彼の頭を撫でて、俺は。
「帰ろっか、俺達の家に」
すると、ニコニコの彼はもっと顔を輝かせて。
「うん!帰ろっ!」
抱っこして、と。
俺に甘えてくるのも、可愛い。
だから、俺は彼を背中におぶると。
「相変わらず、仲がよろしいことで」
そう言って、酒を煽る幼馴染に。
「ヤケ酒は程々にしとけよな」
「……うっせ。言われなくてもわかってるっつの。てか、俺は酒弱くねぇーから」
「まぁ、それもそうだな。でも無茶な飲み方はするなよ」
なんて。
俺は知っているから。
幼馴染も、俺の恋人である彼のことが好きだったことを。
だからきっと、俺と彼の関係を見て、傷付いているに違いない。
どうか、早く幼馴染にも素敵な恋人が出来ますように。
End
7/11/2024, 11:18:56 PM