summer

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君は今



夢を見た。
夢から覚めた。

あの頃じゃないことを思い出す。

あのころ君は親友だったし、
あのころはいつ会っても嫌なことひとつなく同じ笑顔だったし、
あのころはきょうだいみたいで、
あのころは隣に座って日がな空を見ていたし、
(本当の意味で本当に)
百年経ってもいっしょだった。

睦みあって、うんざりして、
ほとんど憎みあって、
わたしたちは雑に手を振りあい、あっちと向こうに歩み去って、

十年経った。

ベッドに横になったまま、わたしは驚いている。
君がどうだったとか今どうかとかどうでもよくて、今わたしの前に君がいない。かつてはそんなこと起こると思わなかった。
でもそれは起きて、回復も奇跡もなくって、
わたしはなんとなく平気になり、
君を思い出しても渋い紅茶くらいの味が舌にする程度で。

心配もしてない──

わたしは数分ぼんやりして、起き上がり、家族のためのご飯を作り、君のことをすっかり忘れる。
次に思い出すまで。
君が少しずつ、少しずつ色褪せた写真になることにそのたび驚き、けれど寂しくはない。今わたしが君を嫌いで、今の君がわたしを憐れんでいても。昔の二人は満ち足りて笑っている。凍りついた時間のガラスの中で。わたしには親友がいた。もうそれで、充分になっている。

2/26/2023, 1:32:29 PM