星月夜

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手袋の思い出
幼い頃、雪がちらちらと舞いだすと母親がいつも私のお気に入りの手袋をそっとはめてくれた。
雪にはしゃぎ駆け回る私が、手をついてしもやけにならないように。
昔に思いを馳せ外を見やる。
窓の外には、あの頃の私のように雪にはしゃぎ駆け回るふわふわの手袋をした幼い女の子と、微笑ましそうに寒い手を擦り合わせながら見守る母親の姿が見えた。
「おとうさん!わたしもゆきあそびしたい!」
幼い娘に服の袖を引かれ、振り返る。
「寒いからしっかり温かくしなきゃな?」
私ももう、はめてあげる側になったようだ。
目をキラキラと輝かせながらあれしたいこれもしたいと興奮気味に語る娘を落ち着かせながら、小さな手袋をはめてやる。
手袋をはめてもらい、マフラーをくるりと巻いてもらって「あったかい!」と喜ぶ娘はより一層愛おしく、これからも守っていこうと強く心に刻んだ。
あの日の母親も同じような気持ちだったのかもしれない。
母に思いを馳せながら、私は娘の小さな手を握り、玄関を後にした。

12/27/2023, 3:13:26 PM