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琵琶乃師長

 いにしえに尾張国に謫居の身をやつし、日々、徒然なるままか、慰みに白菊を奏で、都へのおもいは、熱田大神さまをも、揺り動かせ、都に戻る際には、最愛のひととの永遠の別れも、白菊とともに河の淵深く眠るひとは、いづこや
内裏の御簾から、青き空を垣間見れば、音もなく、ひらひらと、蝶が、舞っている
最愛のひと、来てくれたんだね、
もう、こんな、季節になってしまったんだなあ
瞳から、ひかるものをそっと、笏で、隠し、ひとつ、小さな咳払いをし、凛となる
えもしれぬ、心地良い風が、頬をよぎる
あゝ最愛のひと、嬉しくて、嬉しくて、仕方ないけど、私をもう、許しておくれ、
いつの間にか、陽は、傾き、ひぐらしが、遠くで、鳴いている
内裏の篰も、下ろされて、しまった

7/21/2024, 12:12:30 AM