お題『飛べない翼』
ある日、怪我をして飛べない白い小鳥を見つけた。
なんだか痛々しそうで思わず連れて帰って消毒液を塗って、包帯を巻いてあげた。
それからしばらく一緒に過ごしたと思う。鳥かごを買おうとしたら嫌がったし、鳥の餌を買おうとしたらつつかれて、人間の食事を好んだっけ。
とにかく仕事で疲れている僕の癒しになったことは確かだ。
何日か経って、小鳥は窓の外を見つめるようになった。
「どうしたの?」
と聞いたとたん、眩しい光が部屋にあふれて気がつくと僕の目の前に白いワンピースを着た少女が立っていた。少女の背中には真っ白な翼が生えていた。
「君……」
「今までたくさんお世話してくれてありがとう。楽しかった。でもごめん、戻らないと」
そう言って女の子は翼を広げ、光さす空の方へ飛んでいった。
とつぜんのことに呆然とした僕はなにも言えず、ただ空を見上げるしかなかった。
11/11/2024, 11:41:35 PM