誰よりも、ずっと
四月になり、桜も咲いて、街では制服に身を包んだ中高生を見かける機会も増えた。
新年度の幕開け⋯⋯新型コロナウイルスの影響でマスク生活が当たり前になり、対面授業が減って友達や先生とのコミュニケーションが減ったのは仕方の無いことだろう。
でも、今年からは、マスクを外す機会も増えるとの事で、お互いの表情を見ながら会話が出来そうだ。
誰よりも、ずっとこの時を楽しみにしていたのは、私だけじゃない、皆んな不安もあるだろうけど、表情を見ながら会話することが嬉しく感じているに違いない。
「ねぇ、また|涼香《すずか》と同じクラスだね! また宜しく」
「うん、宜しくね|麻衣《まい》」
高校の入学式に前に発表されたクラス分けの表をみて、親友の麻衣が嬉しそうに駆け寄ってきた。
「あっ、でもさ、私コミュ障なんだよね」
「えっ、麻衣ってコミュ障だっけ!?」
私と会話する時、そんな事気にもなったことが無かったのに、突然そんなことを言ってきた。
「確かに、涼香となら上手く話せるんだけどさ、やっぱり他の子とはね⋯⋯」
「そう言われると、私も不安になってくるなぁ⋯⋯」
何かで読んだけど、コミュ力が高い人=おしゃべりな人では無いって書いてあったのを読んだことがある。
コミュ力って難しいなぁ⋯⋯。
そのことを麻衣にも話す。
「うん、うん、で、コミュ力高い人は、次に、どんな会話が来るのか予測して、機転のイイ返しをする事が出来るって⋯⋯それって涼香が言ってるのは、お笑い芸人の返しってことじゃん!」
「ま、まぁそうかもしれないけど⋯⋯」
「涼香の言ってるのって、私達にも必要なのかな?」
「分かんないけど、ツッコミが上手くなるよ!」
「もう、だから、ツッコミは要らんよ!! お笑い芸人目指したいわけじゃないんだからさ」
「麻衣ちゃん、確かに要らんね!! えへへ」
何かちょっと違ってしまった⋯⋯。
「会話はキャッチボール」って良く聞くから、コミュ力に必要なものって、相手の投げたボールを直ぐに打ち返すことなのかもしれない。
今度はそのことを麻衣に話した。
「成程、涼香イイ事知ってるじゃん、コミュ力高い人は相手との会話を繋げる為に、直ぐに答えを打ち返すのがイイってことなわけだね」
「うん、うん、その通り、相手の質問に考えてから答えるんだと、話聞いてんのかなって変な空気作っちゃうから、直ぐに打ち返せば会話が続くらしいよ」
「それなら出来るかも、じゃぁ、今度から実践してみるよ!!」
「うん、それがイイね。 私も実践してみる」
こうして、私達はコミュ力に不安を抱いているせいで、学校の帰り道この話で盛り上がった。
まだ学校二日目、人生の主役は自分自身なのである。
インターネットやSNSを使いこなしている世代だけど、実際会って話す機会が減ったのだから、リアルなコミュニケーションに苦手意識を持つのは当然かもしれない。
4/9/2023, 9:28:20 PM