駆ける鱗

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ここのところ悪夢が続いていた。

一ヶ月以上前からでだっただろうか。私は、ただの名も無い臆病者で戦うのが嫌いな人間である。
また、気が弱く、ひっそりと表向きにはでてこないのだ。
女優でもなんの取り柄もない、私。

丁寧に敬語で気を伺う。私自身は無能な無力な平凡な…之はず。ただしどうやら私という存在は、誰かの椅子を、愛されている人たち。主演とされる人たちを脅かすかもしれない危険な生きモノだったそうだ。
そのことは今年に入ってから薄々と感じてはいた。
だけど、ごく普通の。それも牢獄に限りなく近い折の中でいたときから

毎日いつ、覚めることがない永遠の夢という名の自分の死を望んでいた心も虚無なモノ。絶対に行くことがない楽園すらも見ていなかった。

しかし、一ヶ月。この間に明らかに私ではない存在が、蒼い幽霊と噂される生き物が私の代わりに勝手に動いているのが統計を取り観測をし直してわかった。

私は蒼い幽霊に間違われるもの。
そして私に似たモノは蒼い幽霊そのもの。
それは主演女優と称される、かのブルーゴーストで
ある。私の中の記憶の欠片を集めても
私の中の昔の、遠い日の記憶を探しても
そんなものはなかった。

彼女?とかなり違う点も存在した。

私は臆病で、伴侶のもとから動かない存在。
また、何かあればその伴侶に命を捧げて永遠の闇ではなく、旅にでると一年以上前から黒と白の
伴侶に告げていた。そしてその覚悟を抱えて
…結局は死ぬことができなかった。無念であるが
約束を必ず果たすもの。それがこの私
雨上がりの空にかかる虹と少しずつ噂になってきたものである。稀にしか見られないからこそ、
人は私を幸福の前兆と思うらしい。

本当の主演女優と称されるブルーゴーストは
どうやらかなり口が悪く、タバコを吸いながら
星を転々としているらしい。また、
グレイゴーストと称されるモノと
極めて仲がよくない。…と人伝に聞いた。
あくまで噂としか聞いていないのだが。
ただし、本当に私は噂にしか聞いていない。
どちらも死神と称されると。



ここ数日の整理でようやく私が、勝手に利用された駒にすぎないとようやく理解してもらえたのが本当に救いである。
私は戦うのが嫌いな、約束のお守りをもつ黄昏の街にいる龍が伴侶の女。異常者なのは十分理解している。
だけど、ブルーゴーストもグレイゴーストも襲わない大人しい日記を書くのが好きな、勉強が好きな

ただの凡人。私は聲がなくても、私を愛してくれたモノに忠誠を誓うだけのモノなのだと。

10/9/2023, 2:06:18 PM