たなか。

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【「ごめんね」】

「ごめんね」
彼女はそう言った、苦しそうな声で。私は許すことなんてできなかった。だって、私だって怒りたくて怒ったわけじゃない。ただ、どうかしてたんだ。だから、二人とも悪いとかないと思う。不運が偶然にも重なって起きてしまっただけ。そう思ってる。ただ、彼女はそうでもないらしい。私のせいなのに、なんて思っても嘘になる。
「嫌いになってよ、永遠に。」
言っちゃいけないことは分かってる。でも、それ以外にどうすればいいかなんて誰も教えてはくれなかったし本にも書いちゃいなかった。迷ってる、路頭に。叫びたい、大きな声で。ごめんねって言った彼女をもう悲しませたくなくて嫌いになって欲しかった。これは私だけの現実逃避かもしれない。彼女は逃げられないかもしれない。でも、何故かあの時はそれが最善だと思ってしまったんだ。
「こんなはずじゃなかったの。」
動揺を隠しきれない声音。どんどん早くなる鼓動。目の前にいる彼女は昔と少し違う。いや、だいぶかも。優しい顔をしてその手を赤く染めていた彼女は奇麗だった。私の最後に見た景色。
「ごめんね」

5/29/2023, 12:18:24 PM