ゆるゆるの頬を抑えて君は朝からご満悦。
「朝から頬っぺたが落ちそうだね?」
美味しいものを食べた訳ではない。だって朝食はこれからだ。
「良い夢を見まして」
話しかけても夢を思い出しているらしく、手はそのまま首を左右に振って照れていた。あまりみない行動を可愛らしく思うも、疑問が浮かぶ。
…君が照れる夢ってなんだ?良い夢で照れる。小動物に囲まれるとか?もふもふした生き物に囲まれるのが前に夢だって言ってたし…。
「取り合いをされる夢だったの。引っ張られて、えへへ。」
君を取り合う?
「待って。俺じゃない誰かを気に入ってるってこと?」
聞き捨てならない、一体誰が君の夢に入り込む許可を得たのか。君が思って夢に見てしまう程のそいつは、例え犬だろうと俺の敵だ。
「夢とおんなじことしてる」
両の手を握られた君は動けず顔を見ていた。俺は君の夢を見てないからわからないが
「俺、いたの?」
「分裂してたくさんね。」
「分裂。」
「かわいかったり、かっこ良かったり、真面目だったり、料理好きだったり、猫耳がついてたり…」
目を閉じ、どんな俺がいたのか紹介される。アメーバなのだろうか…。最後の方なんて君の趣味を垣間見た気がする。猫好きだと今知った。
見てた夢とは俺がたくさんいる夢らしい。君が好きって気持ちは、誰にも負けないし、喜んでくれるなら越したことはないが、いくらなんでも
「俺多すぎない?」
「大好きが集まりすぎて楽園だったよ。それで『どの俺が好き?』って聞かれて答えられなくて」
思いの外、混沌としている空間のようだった。だが君の話の先が読めた。夢の中でも俺は俺だ。
「乱闘が始まったんだ?」
「始まる寸前。で目が覚めて考えてみたんだけど…」
一呼吸ついた君がまっすぐ見つめるから続きを待った。
「私が知らない部分もまだあるでしょ?それも含めて、全部まとめたあなたがいいなって。」
「欲張りだねぇ。俺も君がいい。君だけがいいんだ。」
さて朝食にしようか。「料理上手な俺」が君のリクエストになんでも応えてあげるよ。
『こんな夢を見た』
1/24/2023, 3:42:16 AM