サルサは昼ごはんを食べながら眉をひそめて考え事をしていた。内容は、昨日のことである。
サルサにとって『何を考えているか分からない』、なんてことを言われたのは全く気にはならなかった。人の思考回路は簡単に理解できるものではないし、困惑したりするようなことではなかった。
が、サルサにとって心の中に残り続けたのはアリアのことであった。
一番最初にこの世界に連れてきてくれた人、というだけの人だとサルサは思っていたが、思ったよりもアリアが自分のことを目にかけてくれていることに困惑を覚えていたのである。
「……サルサさん?」
「……ウィルさん? どうしましたか?」
手を止めて考えていたサルサの様子を心配したのか、正面でご飯を食べていたウィルは彼の顔を覗きながら名前を呼んだ。
「…………いえ、大丈夫かな、と思っただけです。手が止まっていたので」
「……あぁ…………ちょっと考え事をしていまして」
そう呟きながら苦笑いを浮かべたサルサに対して、ウィルは首を傾げた。
「……考え事、ですか」
「その………………」
そんな出だしと共に考えてたことを伝えようとしたが、ふと、昨日のウィルがアリアに対して向けていた様子を思い出す。
やたらと強い口調で若干睨みながら話すウィルは今までに見ていた温厚な性格とは真逆であり、初めて見せられた激高している姿であった。
それは少々サルサにとって衝撃的なことであり、一夜明けた今でも鮮明に思い出される。
そうなると考え事の内容を明かしてしまえばきっとまたウィルの調子が崩れるに違いない、と思ったサルサは目を伏せながら言った。
「…………覚えること多いな……、なんて」
「……まぁ、何も知らない状態からなら覚えるのはだいぶ多くなることでしょう……」
ウィルは目を伏せながら言った。
いつものウィルさんだな、なんてサルサはそっと息をついた。
1/15/2025, 4:54:35 AM