未知亜

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ㅤ小さな頃から、女であるってことに馴染まなかった。
ㅤ馴染まない、というのはちょっと違う気もする。しっくりこないというか、自分をそこに収めることに引っ掛かりを覚えるというか。そんな感じ。

ㅤ別に年がら年中そんなことを考えてた訳じゃない。性別欄に「男・女・ノンバイナリー」とあったら、悩むことなく「女」を丸で囲んでいたし。性別ってこの世に三つしかないのかなぁ、と思いながらも、この疑問を誰かと話したりすることはなかった。

ㅤ好きだなと思う人とは何も生まれないまま、好きだと言ってくれる相手と付き合ってみた。そうするうちに、否応なく役割がついた。

ㅤ「私」でいられる時期は終わったんだと思った。胎内に宿った生命は、そのくらい私の日常を苛んだから。私ではない、けれど私なしでは生きられない生命。それなのに、初めてこの手に抱いた朝は、ふしぎなほど心が凪いだ。

ㅤはじまりは、漢字では「始まり」としか書かないらしい。でも私は、いまの私たちを、敢えて「初まり」と呼びたい。




#050『終わり、また初まる、』

3/12/2025, 12:57:45 PM