考える葦になりたい鳥

Open App

特別な夜?

同じくらいの背をした君と、キラキラと輝く街を歩いた。ヒールの低いパンプスは君への心配り。
辺りは暗くて少し寒い。

温かな色の光に目を奪われて、カメラのシャッターを切り続ける。想えば、君のことをよく見ていなかったのかもしれない。

僕はまだ、子供だった。

改札で鞄に潜めていた、売り物のクッキーを君に差し出して、「またね」と言って改札を通った。
君が引き留めたから、もう一度改札を通って戻った。

「何かプレゼントを…」と君は言ったけど、お店はもう閉まっていた。次に会う約束をして、また同じ改札を通った。

求めるものが同じだったふたりは、改札を隔てて別れていった。満たされない想いを抱えたまま、真っ暗な田舎道を電車は走って行く。



僕はまだ、子供のままで居たかったのかもしれない。



遠くなっていく駅の灯りが、「さよなら」と言っていた。


1/21/2023, 12:20:38 PM