初めて乗る「深海のクジラ」。
夜の海を漂うだけの
ただの船なはずなのに
乗った人はみんな口を揃えて
寄り添ってくれる憩いの場だと言う。
何艘か行き先の違う船があって
過去行きや未来行きなど
他にも沢山、
記憶の海を頼りに船を変えるので
毎日出港する船が違う。
私が乗ったのはなんだったかな…。
窓の外は真っ暗な大海原。
これは外の時間も窓ガラスも関係していない、
記憶の海のせい。
存在する全ての生き物の
記憶を持つ特別な海。
それを眺めるためにあるのが
「深海のクジラ」なのだ。
私はそんな船にも海にも興味が湧いた。
眠くても夜更かしをした。
何か見えるものがあった気がして。
窓の外に朝日が昇る。
すると海には
ニコニコ笑う少女が映っていた。
ああ、
私の乗った船は過去行きだったみたい。
ないものねだりな私は
無意識に1番幸せだった頃の
幸せが欲しいと思ってしまっていて。
海をかき混ぜて消したくなるくらい
私は笑っていた。
"Good Midnight!"
5/13/2025, 3:07:18 PM