風鈴の鳴る夕暮れ時、縁側から裸足のまま駆け出して
子どもたちを急かす横断歩道
売れ残りを忌々しげに振り回す店主の声
引き留めるような蝉の群れ、命を燃やした絶叫
きっともうすぐ聞こえなくなるわ
色も温度も価値を失う裏側、根の底
張り詰めた糸でこの胸を穿って、いつか私を終わらせて
今日こそ私を連れて行って
か弱い灯火を繋いでしまった、宙ぶらりんのあなた
在りし日の思い出を私はずっと忘れない
もういいかい、叫ぶ声は遠く消えて
白色がお好みでないのなら
どうぞ気が済むまで染め上げて
赤でも黒でも、どうせ滲み出る心で汚れてしまうから
どうか私を連れて行ってね
滴る想いは無垢を浸食してしまったわ
息をするのも億劫なほど、募らせて、抱き締めて
だって本当に会いたくて仕方がなかった
今度こそ一緒にいきたくて
疼く心はいつしか膿みを零して、塞ぐ杭すら融解して
もう引き返す足も持たないわ
半端なあなたは、腐った約束を捨てられない
いつか願った幸福の残滓
輝くことを放棄した夢幻の成れの果て
あなたは私から離れられない
もういいかい、啜り泣く声に誰も返さず
あなたは覚えているのかしら
ねえ、誰を呪ったの、何を守ったの
一体何故、裏返ったの
葬った記憶を掘り返して、爛れた心を見てみたい
この心を奪ったのだから、開いてくれなきゃ可笑しいわ
あなたの為だけに磨いたの
今この時まで確かに守り抜いたのだから
熟れた灯火を喰らって飲み干して、骨まで溶かして
そうでないと許されない
そうしなければ許さない
結局私はあなたに焦がれて眠れない
同じ言葉はもう繰り返さないで
明日を待つのはもう辞めたの
聞き飽きた台詞で誤魔化される少女の季節は終わったわ
今こそ私を連れて行って、向こう岸まで連れて行ってね
落ちる間際に鼓膜が揺れる
もういいよ、を聞き届けて
(またね)
8/6/2025, 11:46:47 AM