—桜の木の下で—
高校二年生に進学した。
今日は、運命のクラス替えの日だ。
(どうか、友達と同じクラスになれますように)
心の中でそう願った。
一年生の時は、中学時代の親友がいたおかげで何人か友人はできた。
しかし、周りに誰も友人がいない状況になってしまったら……。
誰かに話しかけるのが得意じゃない俺は、不安が胸の中に広がってゆく。
桜散る校舎の真ん前。
大きな掲示板に、クラスと名前が書かれていた。
「クラス、離れ離れになっちゃったな。新しいクラスでも頑張ろうな」と親友が言った。
「うん。お互いに頑張ろう」
俺は四組で、親友は七組。
挨拶してから、それぞれのクラスが並んでいる列に向かった。
「出席番号順に並べー」
体育教師の声が響く。
指示通り、自分の番号のところに並ぶと、隣の子に肩を叩かれた。
「ねぇ、私のこと覚えてる?」
隣の子は女子だった。
それだけで、さっきまでの不安が少し軽くなった。単純すぎる自分がバカに思える。
「え、もしかして——」
その子の顔をよくみると、小学校六年生の時のクラスメイトが頭に浮かび、重なった。
「正解! 覚えててくれたんだ」
「うん。まあね……」
当然だ。
隣にいるこの子は、俺の初恋の女子だから。
しかも、告白してフラれている。
忘れるはずがない。
髪色が明るくなり、少し大人っぽくみえる。
そのせいで、すぐには気づかなかった。
「知り合いがいてよかったぁ。これからよろしくね!」
彼女はニコリと笑って、俺の手を取る。
「うん。よろしく」
彼女と話していると、色々な妄想が頭の中で膨らむ。
彼女は俺と同じクラスになって喜んでいる。手を握ってくれた。昔、俺をフったのは何か事情があったんじゃないか。
実は、彼女は俺のことが好きなんじゃないか——?
俺の頭の中の計算機が、そんな夢みたいな結論を弾き出した。
あぁ、単純すぎる自分が嫌になる。
でも、彼女の安らかな瞳をみていると、ちょっとばかり期待してしまう自分がいる。
お題:安らかな瞳
3/14/2026, 4:12:41 PM