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揺れる羽根


 羽根が靡いている。上下の動きの中で風に晒され震えている。その中の1枚が蜘蛛の巣に落ちる。蜘蛛は動かない。ゆらゆらと羽根が風に揺れている。
 揺れる羽根は何も扇がず、擽らず、微睡みを誘うこともない。もう、役目を終えた抜け殻。セミの抜け殻のように集められることもない。
 1枚では何の意味もなさない羽根。あんなに力強く、人々に空への憧れを灯す肉塊を動かした羽根の1枚はただのゴミに成り下がる。鳥は、まだ飛んでいるのに。

10/25/2025, 11:43:20 AM