『ススキ』
脳裏に浮かぶのは、辺り一面のススキ野原。
熟しきり、風に飛ばされるほど綿毛が膨らんだススキの穂が、ふわふわキラキラと輝いている――そんな風景。
人は皆、心の中に原風景を持つという。
それは幼い頃に体験したことだとか、むかし暮らした場所だとか、はたまた記憶の組み立てによって作り出された架空のモノや場所だとか。
人によって違っていて、しかし強い郷愁を感じるそれは、個人回帰の基準点となった。
肉体を捨て、意識体を仮想空間に放流して、全ての人がひとつの大きな海に揺蕩う現在。
自我が拡散しないよう、私は時々そこへ還る。
私はススキ。
あなたは?
11/10/2024, 5:00:40 PM