「夫婦」
今日2番目のお客様は55才の御婦人だった。
なぜ正確に年齢を知っているかというと、ご本人が申告されたからだ。
ゴーゴー55なの!とにこやかに告げたその人はわたしが働くコンビニの常連だ。
ほぼ毎日顔を合わせるので、たまにレジで言葉をかわすことがある。今日は唐揚げとビールを購入され、ふいに言ったのだ。「私今日誕生日でね。ゴーゴー55なの。つまり55才ね」
おめでとうございます、とおつりを渡しながら声をかける。
ありがとう、と嬉しそうに笑うと彼女は店を去った。
勤務を終えた帰り道、近所の自転車屋さんに寄った。
タイヤの調子が悪く見てもらおうと思ったのだ。
「あーこりゃいかんねえ、すぐ交換するからちょっと待っててね」
店主は手早くタイヤを交換し始める。進められた椅子に座って待っていると、店の机に置かれた可愛いラッピングの箱が目に入った。わたしの視線に気づいた店主が照れくさそうに言う。
「今日妻の誕生日でさ。プレゼントを用意したんだよ」
「きっと喜ばれるでしょうね」
「どうかなあ。お前ももうゴーゴー55で年だなあ、なんて茶化したからむくれちゃってさあ」
きっと家で唐揚げとビールを用意して待ってらっしゃいますよ、と心のなかでつぶやきながら店をあとにした。
11/22/2023, 11:04:10 AM