「沈む夕日」
じりじりと容赦ない日差しが頬を焼いていた。
早く暗くなればいいのに。真っ赤な空を睨んで制服姿の少女、奏は苦々しい舌打ちをこぼす。
夏の湿度を含んで重たい空気は粘っこく喉に張り付いて息がしづらい。奏は頬を伝う汗を手の甲で拭った。
ギィ…、その動作に合わせて、ブランコが軋む。ところどころ塗装が剥がれて赤ちゃけた遊具は奏の体には小さすぎるのだろう。少しの身じろぎで大袈裟な音を立てた。
大きなため息をつくとともに、鉄臭い匂いが奏の制服の裾を擦った。
「あっつ……」
唸るような囁きは、夕暮れの寂れた公園に吸い込まれて消えた。
応えるものはいない。今はまだ。
「なにが、日が沈んだら会いましょうだよ。時間をはっきりと言え馬鹿」
スマホの電子版に目を落とすが、そこに映る数字は待ち人の来訪とは無関係だ。
顔を上げる。頭上はまだ赤く、無機質に立ち並ぶ町の屋根の上に太陽は居座っていた。奏は溶けたようなオレンジ色を、睨む。
夕日が沈むまであと……
4/7/2026, 12:30:04 PM