「今日はここに居たんだね藍佑(あいすけ)」
「ん」
ぱっと顔を上げるとサラサラショートヘアの彼がこちらを覗き込んでいる。
「何を飲んでるの?」
「イチゴミルクティー」
「美味しそうだね!ボクも何か買えばよかったなぁ」
彼はすとっ、と当たり前のように藍佑の隣に座った。
「一口飲む?美味しいよ」
「......!?い、いいのかい?」
「うん、一口でしょ」
はい、と彼にミルクティーを差し出す。彼はそれを受け取るが飲もうか飲まんまいか迷っているようだった。
「飲まないの?」
「い、いや、飲むよ」
ちゅー、と一口飲むと何故か口にミルクティーを一度含んでから飲み干した。
「......ありがとう」
「美味しかった?」
「あ、あぁ美味しかったよ」
「なら良かった」
藍佑は彼からミルクティーを返してもらう。
彼の目が何故か泳いでいるのを藍佑は見逃さなかった。
「もしかして好きな味じゃなかった?」
「え?いや、そんなことはないよ。美味しかったさ!」
(...まさか僕が口つけてたのが嫌だった?)
「......委員長って潔癖症?」
「えっと......そんなことはないよ?」
「ふーん...」
ならなんでだろうな...と藍佑はぼんやり考えながら再び飲み始めようとする。
(......委員長が口つけたやつ。僕も口つけるってことは...あれ、これもしかして間接キ)
そこまで考えて藍佑は思考を止めた。なに、男同士で飲み回しなんてよくあることだろ、普通のこと。いや友達居なかったから分からないけど。
(普通のこと......)
「飲まないのかい?」
隣から急に声をかけられてビクッ、と肩を震わせる。
「えっと...要らないならボクが貰ってもいいかな?」
「......いや飲む。僕が買ったやつだし」
「そっか」
藍佑はそっぽを向いてイチゴミルクティーの紙パックを吸い上げる。
(......味わからな。さっきまで美味しかったんだけど。どんな味だっけ...)
それから昼休みが終わるまで、二人は黙ったままだった。
お題 「sweet memories」
出演 藍佑 山吹
5/3/2025, 8:15:54 AM