森を歩くと、たまに嫌な予感を感じる場所がある。
地元の人間なら誰一人として近付かない、そんな場所がある。
そこには、何か得体の知れないものがいるような感覚になり、
そこに踏み入れると、自然と冷汗を流れ、血の気が引く。
『ここに居てはいけない。』
そう直感し、私は急いでそこから離れる。
そこに踏み入れれば、森の外へ一度出なければならない。
そう云われて、育ってきた。
だから、必死に無我夢中で急いで森を走り抜けて、森の外へ出る。
とにかく、走った。
息が切れても、不思議と身体は走るのを止めなかった。
森の外へ出るまでは。
汗は滝のように流れ、森の外の集落に辿り着いた時には、
身体はもうフラフラで、地面に倒れ込んだ。
そこからの記憶はまるで無い。
どうやって、帰宅したのかも憶えていない。
唯、あの場所には山神などと呼ばれる、何かが確かに居たようだった。
5/10/2025, 12:46:47 PM