猫とモカチーノ

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「ごめん!今日出席コード送ってくれない?」

大学に入学して、2ヶ月ほど経った時、時折、友達がそんなLINEをしてくるようになった。

分かりやすいように、A子とでも言おうか。

「えっ……?」

A子だけじゃなくて、この時期になるとたくさんいたクラスメイトの3分の1ほどが授業をサボるようになっていたかもしれない。

授業に出席するのが当たり前だった私には、違和感しかなかった。

体調不良など、仕方ない理由ならわかるけど、みんな本来講義のある時間に、ごはんや遊びに行っているストーリーを載せている。

サボるのも自由だから別にいいと思うけど、わざわざ授業に来てる人に出席のコードを聞いたり、こっそり出席カードを書かせたりするのはなんだか嫌だ。

嫌だったのに、A子との関係が壊れるのが怖くて、私は渋々出席コードを送るようにしていた。

他にも、A子に対して違和感というのだろうか、なんだか合わないなと思うことがあった。

自分の使った椅子をしまわない。
貸したウェットティッシュを飛び出したまま返してくる。
何かしてもらってもお礼を言わない。
まだ教授が話をしているのに教科書を片付け始める。

など、小さなことだったけれど、自分の当たり前とA子の当たり前が違うように感じていた。

それから何ヶ月か経った頃。

A子もう1人の友達B子と一緒に、共通の友達C子の誕生日を祝うことになった。

A子とB子の企画で、サプライズパーティをしよう。

そんな話になっていた。
でもそこで、違和感が大きくなっていったんだ。

3人でお祝いするって話だったはずなのに、なぜかA子とB子の2人で決めた内容を私に共有されていた。

日取りもケーキも2人で決めていて、最初は私もなんでもないふりをして

「色々考えてくれてありがとう!」
「それは素敵だね!」
「任せきりになっちゃって申し訳ない……」

と返していた。

「私なら、ちゃんとみんなで話し合えるようにするのにな」
なんて思いながらも、2人だけで取ってる授業もあるし、最近会えてないから仕方ない。

そう思い込むようにしていた。

しかし、パーティー当日、我慢の限界が来てしまった。

急遽、パーティー前に買い物に行くと言われて、2人が車で迎えに来た。

行き先は100円均一。
「プレゼントをラッピングするやつが欲しいんだ!」
とA子が言った。

「この袋は?」
「えー、それじゃちょっと小さいんじゃない?」
「こっちの方がいいかな!」
「あとあれも買わなきゃだよね!」

話に全くついていけなかった。

3人で割り勘してプレゼントを贈るはずだったのに、どうしても私になんの話もなくプレゼントを買ってしまったのだろう。

私だって、C子が大切だから何かしてあげたかったのに。

どうして2人だけで全て決めてしまったのだろう。

場の雰囲気を壊したくなくて。
1番ダメなのは主役のC子が悲しむことだと思って。

買い物の時も、パーティーの時も、悔しい気持ちも悲しい気持ちも押し殺して笑顔を作った。

悪気はなかったのかもしれない。

自分で気づいていないだけで、私が何か2人に嫌なことをしてしまっていたのかもしれない。

なんにせよ、私にとっての当たり前と、2人にとっての当たり前が違ったんだと思う。

それから私は、だんだん2人と距離を置くようになった。

それから数日が経った頃。

グループを離れた私に、C子が
「実は2人に違和感を感じていた。私もグループを抜ける」
と打ち明けてきた。

その時C子から聞いた2人の知らなかった一面が恐ろしくて、「そんなことをする子だったんだ」
と少しトラウマになりかけた。

あれからしばらく経ったけれど、C子とは今も仲良しだ。

「みんなと仲良くしなさい」と、小さい頃は再三言われて来たけれど、当たり前が一致する人と一緒に過ごすのは、やはり心地がいいと思う。


お題『私の当たり前』

7/10/2024, 7:27:43 AM