作家志望の高校生

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「来たぞ〜……って、寝てんのか……」
無遠慮にズカズカと上がり込んだ家の襖を、勝手知った顔で開く。自分の家のように肌に馴染む空気は、もう出会ってから数十年になる幼馴染の家のものだった。
「ったく……人に準備任せといて寝てんなよな……」
ぶつぶつと文句を垂れ流しながら、机の上に買ってきたものを並べた。
正月三が日も過ぎる頃に会うのが、もう習慣になっているのだ。売れ残りの正月商品を山程買って、男二人だけでギャーギャー騒ぎながら駄弁る。それだけの日が、毎年なんだかんだで待ち遠しくて堪らない。
「……よしっ。」
かまぼこやなますを並べ終え、何か飲もうとグラスを手に取って準備の終わった部屋を満足げに見回した。
「……まだ起こすには早いか。」
家主を置いて一人で飲んでいるわけにもいかないだろうと、飲むのは冷たい麦茶で我慢する。夕飯時には少し早い時間だからと、まだ彼を起こすのはやめておいた。
彼の寝顔を眺めながら、ちびちびと麦茶で口を湿らせる。普段はうるさいくらい賑やかで、子供のようにコロコロ変わる表情も、眠っているとあどけなく見える。こたつに入っているせいか、少しだけ赤らんで汗で湿った肌は、まだ幼い頃の彼の面影を残していた。
それを見ていると、気が早いのは分かっていても、来年もこうして過ごすのが楽しみになってくる。
「やっぱ早めに起こしちまうか。」
俺は麦茶を一気に飲み干し、若干痛んだ頭に顔を顰めてから彼の体を揺すった。
「ほら、起きろ。人に準備させといて寝てんじゃねぇ。」
少しずつ乱雑になっていく動きに、彼の瞼が震える。ゆっくり開いたそこから覗く瞳と、目が合った。
「……ん、起きたか。」
その瞳が、沈んでいく夕日をキラキラと反射していて。瞼の間から段々姿を現すその輝きは、もう夕方なのに、まるで朝日のようだった。
「んぇ……もうそんな時間……?」
寝惚けた瞳を擦る彼を見て、また思わず頬が緩んでしまった。
幼い頃、泣き虫だった俺の手を引いて笑っていた彼は、昔も、今も、ずっとずっと俺の太陽だった。
「ほら、目ぇ覚めたなら早く始めんぞ。飲むの我慢したんだからな。」
冷えた缶ビールで乾杯して、俺たちの、俺たちだけの正月が幕を開けた。

テーマ:日の出

1/4/2026, 7:36:08 AM