300字小説
秋祭り
秋祭りが始まる。
ノボリが立ち、スーツ姿の男衆が神社に集まる。
黄金色の田んぼの農道を
『わっしょい! わっしょい!』
スピーカーから流れる録音テープの掛け声と共に軽トラックに乗った神輿が回る。
「すっかり人も少なくなって……」
煮染めと寿司を作る女衆。それでも近隣の町から、この日の為に村に人が帰ってくる。
さあ――。
奉納舞が始まると、空がにわかに曇り、時雨が境内の人々を濡らす。
「ここの神様は寂しがり屋の感激屋だから」
今年も集まった人々の無事な顔に感極まって嬉し泣きをしているのだろうか。
泣いた空に秋の柔らかな陽の光が戻り、虹が掛かる。
舞もたけなわ。
秋風にキラキラと雫の乗った稲穂が、畦道のすすきの穂が輝いた。
お題「空が泣く」
9/16/2023, 11:34:05 AM