コルン

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「時間よ止まれ」


部活帰り、午後7時。太陽も家に帰ってしまって、空はすっかり紺色に染まっている。身体が重いのは、ノートや教科書が詰め込まれた鞄を背負っているからだけではない。理を歩く友人二人も同じはずだ。「疲れた」の一言だけで感情も感覚も共有できるこの時間は嫌いではない。とっくに飽きてしまった下校道。言葉はいらない、考えていることは同じだ。6本の足は自然に直帰ルートを外れて、駅前のコンビニエンスストアに向かう。白と緑と青の光に迎えられながら店内に吸い込まれ、思い思いのアイスを手にする。すぐ隣の人気のない公園で、ブランコに乗りながら、まだ硬く冷たいそれを齧る。ここで私たちはたくさんの言葉を交わした。その日の楽しかったこと、辛かったこと、嬉しかったこと、傷ついたこと。たくさん笑って、たくさん泣いた。これからもそうなのだと思う。その日何があったとしても、この時間、この場所だけは私たちのものだ。私たちは、忙しい。帰ったら課題も山ほどあるし、明日のテストの勉強もまずい。あぁ、今日部活で注意されたこと、直さなくちゃ。全部、家に帰ったら頑張るから、だから。今はどうか、何も考えず、このままで。願わくば同じように苦しみを抱える二人も、同じ気持ちでありますように。
ブランコが高く上がる。このまま何処かに飛んでいけたら、なんて会話、この前もしたっけな。

「時間、止まってくれないかなぁ」

9/19/2024, 12:53:08 PM