夜空の音

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イブの夜

「いらっしゃいませ。」
店頭もドライブスルーに来るのは男女ばかり。会話も、カップルと思われる人ばかり。会話の中から、今日はクリスマスイブだと気付かされる。
「ありがとうございます、またお越しください。」
そんな中、私は無心で働く。

「これ!早くしろよ!ケンタッキーのチキンが冷めるだろうが!」
そう言って突きつけられたレシートにはポテトLサイズが7個揚げたての文字が印字されている。
「申し訳ありません....。」
7個も揚げたて、そんなのすぐに揚がるわけが無いと心の中で悪態をつきながら、謝罪を告げる。

「お客様、他店でお買い上げの商品を店内でご飲食されるのはお控えいただけますか?」
20代後半の男女の席に広げられたものはモスバーガーのバーガーとチキンだ。
「えー、でも、ポテナゲと飲み物買ってるからいいじゃん。」
「おっしゃる通り、当店の商品もお買い上げいただいてますが、当店では当店でご購入されたものに限りの飲食をお願いしております。ご理解とご協力をお願いいたします。」
舐めた考えなのに、どうしてこちらが下手に出ないといけないのだろう。

夜もふけて0:00を回ろうとしている。
やっと帰れる。
「....てかオネーサンかわいそー。」
明らか酔っ払ってる女性が注文途中に絡んでくる。
「ねぇ、彼くんもそう思うよねー。」
男性は女性をたしなめようとしているが、彼女は暴走を続ける。
「イブなのにー、オネーサン彼氏いないんでしょ?だから働いてる、かーわいそー。」
私は幸せっ!と男性に抱きつく。
男性はすみませんと謝るが、その目は可愛い彼女に惹き付けられている。
「いえ、大丈夫ですよ。結構酔っていらっしゃるようですが、大丈夫ですか?」



「....つかれた。」
仕事を終えた私は、スマホで時間を確認しようと電源をつけた。
『バイト、お疲れさま 俺 忙しかったけど、そっちも?』
真っ先に通知が目に入る。
『そっちもお疲れさま。結構忙しかったよ。』
返事を送ると、直ぐに返信が帰ってくる。
『イブだもんな、マクドはたいへんや
がんばってえらいな そんなとこもすき』

散々な1日だったが、こんな形のイブも、幸せだと思った。

12/24/2024, 2:07:58 PM