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運命の赤い糸。いずれ結ばれるべき二人の男女の小指に
絡まれた決して見えない、切れない赤い糸。
「なあ、運命の赤い糸って信じるか?」
「なにそれ少女漫画にでもハマったの?」
「実はさ、俺見えるんだ。」
「───今なんていったの?」
「だから見えるんだって、赤い糸。」
そんな突拍子もないことを彼は私に向かって語る。
「何で今そんな嘘をつくのよ。」
「俺が嘘なんてつくと思うか?」
「はぁ、まあいいわ。じゃあ見えるとしてあなたから見たらどんな風になってるのよ。」
「ああ、すげぇぜ。街中長い糸だらけでさ、特にそこら辺でイチャイチャしてるカップルなんて小指に巻き付き過ぎすぎて痛くねぇのかってなるくらい。まあ別れそうなカップルは逆に糸は細くて切れそうだけどな。」
冗談にしては結構現実味のある喋り方で信じてしまいそうになる。もし本当だとしたら気になることがある。
「じゃあ私はあなたと結ばれているのね。」
そう言うと彼は一瞬無表情になる。だがすぐに笑顔になって言った。
「当たり前だろ?俺たち付き合ってるんだから。」
その顔に違和感を感じて私は話題を変えた。
翌日学校へ向かい席に着くと隣の席でよく話す彼に話しかけられる。
「おはよう。昨日の宿題やった?ページ数多くて大変だったよね。」
「ええ、まったくあの先生本当厳しくて嫌になるわ。」
そう言いながら彼の方へ向こうとすると急に小指を引っ張られる感覚がした。顔を上げると彼と私の間には赤い糸が見え私の糸はまるで今まで無理やり結ばれていたかのようにグニャグニャに曲がっている。
「どうしたの?」
彼の心配する声が聞こえる。どういうこと。頭が混乱してなにも考えられなくなる。一つだけ分かることは彼は嘘をついていると言う事だけだ。


俺には物心ついた時から運命の赤い糸が見える。とてもいい雰囲気の恋人たちの小指にはお互いの糸がきつく結び合っているが、逆に喧嘩をしている恋人たちの小指は細く今にも切れそうで実際両親の糸は切れていて、その後すぐに離婚した。糸が人生を左右すると分かった時に幼馴染の彼女の糸を見た。その糸は俺とは繋がっていなかった。何で。何で俺じゃないんだ。
俺はこんなにも好きなのに結ばれる事はないのか。その瞬間あることを思いついた。まだ彼女は運命の相手と出会っていない。だったらそんな運命は変えてしまえばいい。俺は彼女から見えないように赤い糸を無理やり切り自分の糸と繋げた。これで大丈夫。まだ俺は知らない。
彼女の運命がすぐ近くにいることを。彼女に嘘がバレてしまった事をまだ俺は知らない。

『赤い糸』

6/30/2023, 11:25:26 AM