ミキミヤ

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「さあ行こう」と僕の手を引いて、君が連れ出してくれた世界は眩しかった。独りで殻にこもって丸まっていた僕に、その世界は最初眩しすぎて、躓いてしまうこともあったけれど、その度に君は僕に寄り添って励まして、僕を立ち上がらせてくれた。
そんな君はある日、僕に背を向けてしまった。君は「お前が嫌いになった」って言ったけれど、僕はその言葉を信じられなかった。信じたくなかった。でも、信じたくない心とは裏腹に、僕の体は固まって、君へ手を伸ばすことはできなかった。

それから1年。共通の友人から、君が遠くに旅立ってしまうという知らせを聞いた。もう会うことはできないかもしれないとも。
君と離れてからずっと、頭の何処かで君のことを考えていた僕は、耐えきれずに駆け出した。もう君に会えないなら、最後に一度だけ会いたかった。何を話すかなんて何も考えないまま、体が先に動き出していた。
そうして、旅立つ君の前に立った僕に、君は子どもみたいに泣きながら、本当のことを告げてくれた。「お前を嫌いになりたいくらい好きでつらかった」と。
僕らはきつく抱き合って、2人で泣いた。

君が旅立つことを僕は止められなくて、君もその選択を変えることはなくて、僕らはまた離れることになった。
でも、あの時君に「嫌い」と言われた時とはもう違う。
君は僕を想ってくれてる。それが頭の中にあるだけで、僕の心はあたたかかった。

6/7/2025, 8:43:22 AM