KICHINTO

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8 イブの夜


タイミング良く降りはじめる雪は恋人たちを騒がせた。
ふわりと舞う雪は月明かりに照られて光り輝く。天使の祝福を受けた小さな光りが、永遠の愛を誓いあった者たちへの幸せを願ったプレゼントだ、と肩を寄せあい語りあう。
そう、本日は聖夜――クリスマスイブ、ってやつだ。
どこもかしこも煌々と明かりが灯り、行き交う人々であふれている。

「うっぜぇ……」

丈の長いコートを羽織りフードを目深に被った男は、うっとうしそうに、抱きあう恋人たちを見やった。
だが、神聖な夜とは不釣り合いな格好をした少女が、こちらを見ていることに気づいた。

「……?」

ところどころ破れている薄手のワンピースから覗く肌は血の気がなく蒼白い。腰まである金色の髪……、いや、前髪も腰まで伸ばしており、時折揺れる髪のあいだから、うつろな黒い瞳と見合ったことで、男の方に向いているとわかった。
だが、明らかに場違いである少女の姿が見えていないのか、人々は存在を無視し通りすぎて行く。
これはやばい――!男の本能が警告して引き返そうとした瞬間、

「アハハハハh、mっツツツツケエeeエェェエアアaア、djd339238133333342429720423469la91**aeidaもr―ダッダッd」

無機質で抑揚のない笑い声が頭の中で響いた。

――男の運命を変えたイブの夜の話し。

12/24/2024, 2:30:10 PM