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「sunset」


 用事を終えて外へ出ると突き刺すような冷たい風が頬を撫でる。厳しい残暑も終わり、すっかり冬になってしまった。まだ11月だというのに、駅前に並ぶおしゃれな店々はすっかりクリスマス商戦真っ只中だ。
 思ったよりも早く用事を済ませることができたので、昼過ぎには家に帰ってこられた。凍える手足をこすりながらリビングのこたつにダイブする。こたつの上のお菓子をつまみながら、お昼のワイドショーを眺めて一息ついた。
 最近のテレビはコンプライアンスの厳しさからか、いつ見ても当たり障りのない食レポやクイズが繰り返されていて退屈だ。

「んっ!美味しい〜!外はサクサク、中はふわふわで〜…」
「ほんとに美味しいですね〜!この味の秘訣はなんなんですか?」
「実はですね、生地にとあるものを練り込んでいて…」

 なんの目新しさもない、量産型の番組という感じだ。日曜だというのに、寒い朝から用事を済ませて疲れてしまった。こたつも温まってきて…


 はっ、どうやら眠ってしまっていたようだ。つけっぱなしのテレビが何やら騒がしい。

「…繰り返します。NASAの発表によると、地球の自転と公転が止まってしまった、ということです。この後日本政府は緊急会見を開く模様です。首相官邸に中継をつなげます。」

「えー、NASAの発表があった通り、地球は自転及び公転運動を止めてしまったのは事実であるようです。原因はわかっておらず、我々日本政府もJAXAの協力のもと、対応を図っております。混乱が予想されますが、国民の皆様は自分の安全を最優先に……」

 なにがおこってるんだろうか。まだ夢の中にいるのかもしれないとも思って頬を強くつねってみるがとても痛い。どうやら現実のようだ。日本はちょうど日没の時間で、おそらくこのまま太陽は動かないのだろう。これからどうなってしまうのだろうか。

 地球の静止から数日が経った。地球の静止の原因は未だわからないようで、報道を見る限りではこのまま地球は動かないままだそうだ。
 地球の静止によって、地球と太陽の距離を保っていた遠心力はなくなり、地球は太陽へ近づいている。また、どうやら月も地球に近づいてきているようで、確かに前よりも大きくなっている。日本は日没直前の状態で、なんとか保っているが、太陽が沈み切った地域では気温が低下し、極寒の中人々が過ごしている。
 地球上は大混乱だ。月は日に日に大きくなり、地球に激突しようとしている。月の重力によって海はうねり、海岸地域は破壊され尽くしてしまった。人々は突然突きつけられた世界の終わりを前に、ただ黙って待つことしかできないのである。


 私はこの黄昏の空のもと、地球の最後を見守ることになるのだろう。私は、この光と闇の狭間で、世界の終わりに何を見るのだろうか。

12/2/2023, 2:05:37 PM