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カーテン
そこから差し込む朝の光が、昼の光が、夕方の光が、夜
の街の光が、私は嫌いだった。
これから始まる一日が。
まだ何も出来ずにいる自分が。
何も出来ないまま終わろうとする今日が。
明日に怯えて眠りにつかなくてはいけない今が。
私は、嫌で嫌でしょうがなかった。
だからもちろん、私はそれをふさぎきってくれないカーテン(もちろんそれが悪くないことはわかっている)に少しの苛立ちを覚えることがある。
でも、同じように、私は家の中の光も嫌いだった。外の光の圧倒的な眩しさとあたたかさに届かない、不安を煽るそのオレンジ色が好きじゃなかった。しかも、その中の光は家族を連想させてしょうがない。当たり前のその音が、色が、どうしても遠いもののように思えて、届かないことを知りたくなくて。
カーテンは、それを隠してくれた。知らない家から、私を守ってくれた。
だから、カーテン。かこっていて。

7/1/2025, 8:43:54 AM