とわ

Open App

束の間の休息


「あ〜〜外はあんなに穏やかな天気だってのに俺たちはこんな狭いアパートで何やってんだろう…。」
「溜めたレポートでしょ?」
「ま〜じでこの実験の考察何もわからん。」
「ははは…グループLINEに返信来るまでお茶にする?実は昨日焼いたパンプキンパイあるよ。」
「えっやば、最高の秋、最高の恋人!」
「はは…喜んでくれて嬉しいよ…。」
怜はデスクトップをぱたりと閉じてソファに倒れ込んだ晶の言葉に苦笑しながら立ち上がった。
晶の現実逃避に付き合うため、キッチンで電気ポットを水で満たしてスイッチを入れ、冷蔵庫からパンプキンパイを取り出す。ティーポットにはスパイスたっぷりのチャイのティーバッグを二つ放り込み、パンプキンパイは二切れ切って紙皿に乗せる。ふと思い立って冷凍庫の中のバニラアイスを取り出し、パイに添えてシナモンとナツメグを振りかけた。
「あ〜〜良い匂い…家の中も秋だ…最高〜…。」
「うんうん、風に曝されずに楽しむ秋もいいでしょ。」
沸いたお湯をティーポットに流し込み、スマホのタイマーを起動させる。休日のレポートも、こんな緩やかな時が流れるなら悪くない。怜はスパイスの香りを吸い込んでそう思った。

10/9/2023, 8:14:43 AM