いろ

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【三日月】

 夜空に浮かぶ三日月を、盃へとうつしとる。水面に映り込む月影が美しく輝くその盃を、恭しく献上した。
 鏡や水面に映る影を楽しむなどという古風な習慣を楽しむ者は、今となっては数少ない。けれど遥か太古の時代からこの国を見守り続けてきたこの方は、今でもこうした古めかしい遊びを好むのだ。
 龍の化身たる麗人は、僕の手から受け取った盃を傾け、天上に輝く三日月を飲み干す。白い喉がこくりと動くのが艶かしい。
 満足そうに微笑んだその人の手が、僕へと伸びてくる。くしゃりと幼い子供でも褒めるみたいに頭を撫でてくれるその温もりに、心がふわりと満たされる感覚がした。

1/10/2024, 12:25:29 AM