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色々注意



















私は、好きになってしまった。
腰あたりまである長い黒髪、背が高めの華奢な身体。
白い肌色に長い睫毛。
その姿を目にした瞬間、私は心を奪われた。
そこからは、ストーカーみたいに目で追ったり、自分なりにあの子の頭に残るように頑張ってみたけど、あまり効果はなかったみたい。
自分は、あそこで騒いでる陽気な奴みたいにはなれないから、できることは限られていた。
私が衝撃を受けたのは、雪がようやく溶けてきた頃。
騒がしい生徒玄関で、靴箱からローファーをとりだして踵をコンクリートに叩きながら帰ろうとしていたときだった。
「あの、すみません」
背後から聞こえてきたのは、鈴のような美しい声。
一瞬で、あの子だとわかった。
顔が歪みそうになるのを抑えて振り向いた。
「…はい、どうかしましたか」
「えっと、これ…落としてませんか?」
差し出されたのは、お気に入りのシャープペンだった。
記憶を引きずりだしていると、彼女の困惑している表情が目に入ったので、胸が痛くなりすぐさま返事をする。
「これ、私のです。すみません、どこで拾いましたか?」
「あそこの廊下で置いてあって…」
「ありがとうございます、これお気に入りなんです」
何年も使っているから手持ちの部分が薄汚れているが、書き心地もよく、母からもらった大切なものだ。
「そうなんですね」
微笑む彼女の顔は、パーツが全て整っているからかとても輝いて見えた。
「はい、お礼になにかしたいんですけど」
これは建前。本音はもっと一緒にいたいから。
「…じゃあ、我儘言っても良いですか?」
「いいですよ」
「一緒に、ご飯行きませんか…」
顔を赤らめていう彼女をみて、さすがに頬が緩んだ。
バレてないと良いけど。
「もちろん!いきましょう」


4/16/2025, 8:14:48 AM