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「私の当たり前」

今日はついてない。朝は転んで電車に乗り遅れた。遅刻はしなかったが、時間ぎりぎりでいつものコーヒーを買えなかった。仕事中もミスをしてしまい、お昼に入った店で、頼みたかったランチが目の前で売り切れた。

午後は何事もなく仕事を終えた。推しのドラマはなく早く帰らねばならないこともない。そうなると、いつものあの店に行く。課長いるかな。のれんをくぐるといつもの席にいた。

「お疲れさまです」
「お疲れ」

生ビールで乾杯する。課長とは変な告白まがいの出来事があったが、それもエイプリルフールのせいにして何もなかったように一緒に飲んでいる。約束しているわけではなく、いると一緒に飲む。

いないときもある。元々一人で飲んでいたのだ。それが当たり前だった。

当初は5回に1回くらいの割合だった。会わないほうが当たり前。それが3回に1回、2回に1回、3回に2回くらいになると、いるのが当たり前になってきた。いないとがっかりする。

課長はよく愚痴をこぼす。でもそれを引きずらないから聞いていても苦にはならない。ここで愚痴をこぼすのが課長の当たり前になっていたらいいな。

「今日はついてなかった」
と今日は私が愚痴をこぼす。
お互い慰めたりしない。ただ聞くだけ。こんな当たり前の日々が愛おしい。


7/9/2024, 12:24:37 PM