わたがし、たこ焼き、かき氷。
1枚の紙で何でも買えると思っていたあの頃の
君と僕の初めての夜遊び。
2人でかき氷を食べて、わたがしも買ってしまえば
残ったのは硬貨数枚。
神社の階段の隅っこのところに座って
花火を見ながらわたがしを一緒に頬張った。
大きな音を立てて、花火が散ってしまうと
君はわたがしとともに消え去ってしまった。
心に穴が空いたような寂しさが僕を襲った。
あれから十数回目の夏が来る。
千円では何でも買えないことも知ってしまった。
夜に遊びに出ても怒られなくなってしまった。
毎年買っていた綿菓子の店を通り越して、
四つ先の店でたこ焼きを買う。
神社の境内に座っていた君は、
僕の持っていたものに気づいて淋しそうに微笑んだ。
空が色とりどりに変わっているのを横目に君は、
憂いを隠して、たこ焼きを頬張っていた。
翌年の夏祭り
暁が終わり、東雲の空に移り変わっても
君は来なかった。
僕は綿菓子を溶かした。
7/28/2024, 4:06:57 PM