かたいなか

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「花のお題はけっこう多く書いてきたんよ。なんなら花ネタの投稿、複数回書いてるのよな……」
某所在住物書きは、今回ばかりは物語の書きづらさを、己の失態によるものと認めた。
これまで桜吹雪を流れ星に見立てたり、
ポットの中に工芸茶の花を咲かせたり。
季節の花をそのまま登場させたこともあった。
花はこの物書きにとって書きやすかったのだ。

「去年は星空を花畑に例えたっけ」
なかなかの苦しまぎれよな。物書きは回想する。
「まぁ。今年も今年で、強引なネタ書くけど」
そろそろネタを発掘する必要がある。今まで考え付きもしなかった、一度も擦っていないネタを。

――――――

過去作3月16日投稿分あたりの頃に、「先」に一度進みかけて、そのまま停滞した「その後」。
異世界要素をガッツリ挟んだ、厨二ふぁんたじーで前回投稿分とも繋がりそうなおはなしです。

最近最近の都内某所、某不思議な稲荷神社には、
かつて昔の美しい花、可憐な花、今となっては見るのも難しくなってしまった花が、
稲荷の狐に見守られながら、あるいは稲荷神社の花畑を未来に残したい人々に保全されながら、
今年も早春の花をいっぱい、咲かせておりました。

稲荷の花々はしあわせもの。
それを見に来た参拝者に、それを保全する全員に、
少しずつ、稲荷のご利益を分け与えます。
稲荷の花々はしあわせもの。
「そこ」に在ることを願われて、「そこ」で増えることを望まれて、大事に大事にされています。

「同じ花が、実はこの近くの自然公園にもある」
今回の物語の進行役の1人、花咲く雪国から上京してきた藤森が、小さな黄色の花をつけたランの仲間、キンランのまわりの草を整理してやりながら、
「全部事務的に、刈り取られてしまうんだ。
花の知識を持たない公園の管理者によって」
ため息ひとつして、言いました。

「公園に咲いている絶滅危惧種を、行政が認識しておらず、他の雑草と一緒に草刈り機で。
……多くの都道府県で、よくあることらしい」

キンランとは、小ちゃい特徴的な黄色い花をポツポツ咲かせる絶滅危惧Ⅱ類。今もどこかで数を減らしている、保全されるべき花なのです。

「コピーできないんですか?」
私の世界の技術なら、簡単そうに見えるけど。
そう付け足すのが今回の、物語の進行役のもう1人。ビジネスネームを「アテビ」といいます。
アテビはココではないどこか、別の世界から来た異世界人。「世界多様性機構」なる組織の職員。
低コストの高タイパ、ただ1輪の絶滅フラワーを、たちまち100本増やすなど、朝飯前なのです。

「こいつは、ここから動けない」
藤森、小さく首を振りました。
「特定の木の根っこから栄養を、ごはんを貰っている。それを知らずに鉢植えなんかに入れると、キンランはごはんが貰えないから、死んでしまう」
絶対、ぜっッたい、自分からは働かないんだ。
藤森は言って、微笑しました。

「この花も、私の世界の技術じゃ増やせないんだ」
異世界人にして、異世界の職場で働くアテビ。
深くふかく頷いて、さらり、メモに記します。
東京より文明の進んだ世界を故郷とするアテビは、
最初、東京の問題なんて全部ぜんぶ、異世界の技術で簡単に一瞬で解決可能だと思っておったのです。

実は過去作3月10日投稿分で、アテビ、東京の花を数輪「異世界の技術」で枯らしてしまいまして。
前科持ちなのです。
今回も、危なく花を枯らすところだったのです。
「この花も、私の世界の技術じゃ、枯れちゃう」

「いや。どうだろう」
「『どうだろう』、というと?」
「ある人から情報を貰った。あなたが勤めている組織には、たくさんの異世界の技術や道具がたくさん存在していて、私達の技術の先を行っていると」
「そうですね。 そうだと思います」

「アテビさん。あなたの組織のチカラを使えば、
もしかしたら、この地球全部とは言わずとも、東京の貴重な花を少しずつでも増やせるかもしれない」

あなたの職場に、連れていってほしい。
日本の花を愛する藤森、アテビに頭を下げます。
どうぞ、ぜひ私達を知ってください。
異世界から来たアテビ、藤森に頭を下げ返します。
アテビと藤森が一緒になって、稲荷神社から出ていって、これにて物語の新しい花が、さっそく開花。
ここから先どういう結末になるかはお題次第。

ところでその頃、藤森の高葉井、もとい後輩の高葉井が、アテビの敵対組織に勤めている「推し」と、
とうとう、ようやく、エンカウントしまして……?

4/8/2025, 3:17:17 AM