今年の夏は些か太陽から脅されているのかと思うほど日差しが強い。
なぜ今年はこんなにも日差しが強いのだろうか。
蒸籠の中のような蒸し暑さの中、日傘を指し今日もまた職場へ向かおうと1歩踏み出せば目の前に黒い猫が現れた。
さっきまで居なかったのにな、と思いつつも暑いから日陰に行きなね。と声をかけまた踏み出すと後ろから「まだ思い出せない?」と一言。振り返っても誰もいない、さっきまで居た黒猫すらもいなかった。
不気味だ、こんな時に限って周りに誰もいないなんて。気味が悪いから足早に駅に向かう。その間、何かが起こるわけでもなく、やはりさっきは暑すぎて少し疲れているのだと思うことにした、
のに。
帰り道、同じ場所に朝見た黒猫と、その猫を抱えた橙色の髪の男性がこちらを見ては
「あっ、待ってました!さ、行きましょう!」
と手を引いてくるのだ。
人当たりが良さそうな顔をしている男性はそのまま手を引いて歩き出そうとするので、怖さのあまり振りほどこうとすれば
「す、すみません…怖がらせちゃいました…?」
眉を八の字にして困ったように笑う男性にあなたは?と問えば
「俺は、あなたの味方です!またあなたに会えて本当にラッキーだなぁ…」
そう呟く彼は、自分より背が高いことを忘れてしまうくらい、子供のように純粋な笑顔を浮かべるのだ。
なぜ私のことを知っているのか、そう問えばまだ内緒です!さ、行きましょう!と私に手を差し出すのだ。
その光景に、どこか懐かしさを感じて無意識に彼の手を取っていた。
8/7/2024, 6:17:52 AM