「俺、いつまで待てばいい?」
俺を見つめる君の瞳が曇った日のことを、今もまだ鮮明に覚えている。
「いつまでだって待つよ。待てって言うなら」
少し薄暗いところが気に入ってる、学生時代から通った江古田のビストロで。
「ただ、出口が見えないのは辛いんだ」
今みたいに、ワイングラスの脚に指を忙しく這わせながら。
「いつまで、」
「冬になったら」
「ま」
「冬になったらちゃんと考えるから。もういい?」
「てば」
「行くね」
最後は、俺から目をそらし、早口で季節を先送りにして。
「俺はいつまで待てばいい?」
片付けができない子供のように、俺を宙ぶらりんにしたまま君は去っていく。
11/17/2023, 11:15:55 AM