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「お待たせしました」

小綺麗なウェイトレスが運んできたのは
透き通ったゼリーの上に、
ミントの若葉が鮮やかに香るグラスパフェ


「はーい♪ありがとうございます」


私の向かいに座る女は軽く会釈をして
運ばれてきたグラスパフェに目線を下ろした

「あ〜ん、やっぱりキレイ〜!」

耳がとろけそうな甘い声をあげながら
彼女は手早く左手にスプーンを持ち、
躊躇なく透明なゼリーにそれを突き入れた

ふと彼女の目線が私の方へと動くと、
彼女の紅色の唇が動く

「透明なものって、私大好きなんだ」

グチャグチャ
柄の長い銀色のシルバーが
音を立てながら
透明をかき乱す
ゼリーは細かく砕かれ、
滑らかに、スムーズに
まるで流れる水のように形を変えた

「透明な水とか、見ると、ドキドキしちゃう。
これが何とどんな風に混ざって、
何色になるのか、
どんな形になるのか」

彼女の目は真っ直ぐに私をうつしていた
彼女を通して見る私の姿は
鏡で見る自分の姿とは少し違っているように見える

「…変わってるのね」
私は思わず口にした
すると彼女はとびきりの笑顔を見せながら

「ねえ、大好きよ」



砂糖の塊みたいな甘く重い囁きは
私の耳の奥にこびり付いて、
その日の夜は透明な水に溺れて息絶える夢を見た

5/21/2023, 11:44:13 AM