猫宮さと

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《これまでずっと》
近い。
何が?
あ、はい。私と彼との距離が、です。

空の上で生死の境に立たされた時。
空の上なのに立ってるの?とか言わないでね。
彼が、私を命がけで助けに来てくれた。
私を…抱きしめて、闇の者じゃないって認めてくれた。

物凄く嬉しかった。もうこのまま死んでもいいくらい。
これを言ったら、彼に怒られそうだけど。

で、その日以来なんだけど、彼との距離が近いのです。

物理的に。

朝は私の目の前までわざわざ来て挨拶。
食事はテーブルの都合上変わりはないけど、私の椅子の背を引いて座るまで離れない。
支度のために部屋に戻るときもしっかり隣について来る。

今も道を歩いてるんだけど…腕が触れそうなほどに近い!

嫌じゃない、もちろん嬉しい!
けど、あまりの供給過多に頭の回線は焼き切れるどころか蒸発しそうです。
パンクする!助けて!どうすればいいの!

これまでも一緒に歩いて本部まで行き来してたけど、2Lペットボトルが入るくらいのスペースは空いてた。
何をするにしても一定の距離を置いて、彼は私に接してきた。
これまでは監視のための同居だったし、彼の性格上それが礼儀と心得ての行動だったんだろうな。
それでさえも、私は物凄く嬉しかったのに。
傍にいられて、話が出来る。あまつさえ一緒に住んでいる。
それだって隕石に当たる、ううん、宝くじ1等が当たるよりもとんでもない幸運だったのに。

それなのに!この距離感!!

確かに抱きしめられた…事もあるけど、それとこれとは話は別!!

しかも、キラキラとエフェクトが掛かりそうなほどニッコニコな笑顔!!
破壊力があり過ぎるんですけど!!もう素敵過ぎる!!

いつもなら何気ない会話を交わして行く道も、今日はお互い無言で。
私はこの状況に緊張し過ぎて、ずっと足元近くを見て歩いてる。
夏の日差しも暑いけど、それ以上に頬が熱い。

それでも伸し掛かる緊張に負けてちらと彼の方を見れば、キラキラをパワーアップさせて微笑みかけてきて。

破裂しそうな心臓。燃え盛る頬の熱は、首や耳を伝って全身を巡り。
恥ずかしさと照れくささからまた視界を足元に戻せば、頭上からはくつくつと笑い声。

知ってはいたけれど、私は絶対にこの人には敵わないんだろうな。

7/12/2024, 12:57:48 PM