わたあめ

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 太陽が南の空高くになって、ようやくサンタクロースとトナカイたちは自分たちの村を目にする事ができた。
 陽が登ってからの空の移動はいつもより暑く何度も休憩が必要だったし、人目を避けるために少し遠回りをしなければならなかった。
 自分たちの家に着いた安堵と普段とは違う旅をしてきた事の興奮でトナカイたちはおしゃべりになる。
 「2つ目に立ち寄った湖がよかったな」
 「そうだな。あそこの水を本当に美味かった」
 「飛び立つ俺たちを見た時の水鳥の顔を見たかい?」
 「ああ、目が飛び出しそうになっていたな」

 家の上空まで来ると、家の前でドワーフたちがサンタクロースとトナカイたちに手を振っているのが見える。
 明け方まで呑んだ後、ひと眠りしたのだろう。みんなすっきりした顔をしている。12月に入ってから忙しい日々が続きみんなピリピリした空気を醸し出していたが、今日はいつも通り穏やかな表情をしている。
 
 地上に降りるとドワーフたちが駆け寄ってきた。
 「ずいぶん遅かったじゃないですか」「心配しましたよ」と口々に声をかけてくる。
 「まあまあ、話は中でゆっくりしようじゃないか」と言いながらサンタクロースは家の扉を開けて、みんなを招き入れる。

 暖炉に火を灯し、ソファに腰をかけて話しはじめた。
 クリスマスイブの夜、家を出るのが遅くなってプレゼントを配る時間がなくなった事。
 ドワーフたちはびっくりする。自分たちが丹精込めて作ったプレゼントはどうなったのかと大騒ぎ。
 「まぁ落ち着いて」とサンタクロース。そして、子どもたちへのプレゼントを広場に並べた事を話す。ドワーフたちはそわそわしながらサンタクロースの話を聞く。
 子どもたちが広場に集まってクリスマスのプレゼントを開けた事。「サムエルの作ったぬいぐるみ、小さな女の子が胸に抱きしめておったぞ」
 ドワーフたちから歓声が上がる。
「私の作ったゲームはどうだった?」「私の包んだプレゼントはどうだった?」ドワーフたちは一斉にサンタクロースに質問する。サンタクロースはみんなに子どもたちの喜ぶ姿を語って聞かせる。
 ドワーフたちはその話を聞いて、自分の仕事がそんなに子どもたちを喜ばせていたのかと誇らしい気持ちでいっぱいになった。

 ひとしきり話が終わったところで、ドワーフのパラスがサンタクロースに聞いた。
「毎年、子どもたちからもらうお菓子はどうなった?」
 いつもプレゼントをおいていく場所にお菓子がおいてある。それを全部持って帰ってきてみんなで分けるのがクリスマスの楽しみになっていた。
 「それは…」もごもごと口を濁すサンタクロース。お菓子の事はすっかり忘れていたのだ。
 「チョコレート、楽しみにしていたのになぁ」「クッキーたべたかったなぁ」ドワーフたちから一斉にクレームがあがった。
 「わ、悪かった。よし、わしがクッキーを焼こう」そう言ってサンタクロースはキッチンへ向かう。ドワーフたちもぞろぞろとサンタクロースの後をつける。
 
 しばらくしてクッキーの焼けるいい香りが家中に漂ってきた。みんなで焼いたクッキーをみんなで食べる。みんな幸せな気分でクリスマスの日を過ごしました。

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お題:クリスマスの過ごし方

クリスマス三部作になりました。一昨日と昨日の作品も読んでみてください。

12/26/2024, 6:06:55 AM