〜君の背中を追って続き〜
どうやら道が荒れていて先に進みづらく困っているらしい。彼はなんとか足の踏み場を考え進もうとしているようだったが、困っているのは誰が見ても一目瞭然だった。
これ以上は流石に見ていられず助けることにした。連日の雨で道はかなり荒れているようだったのでうちに代々伝わるアレを使うことにした。やり方はもう何度も使用しているため簡単だった。いつものように羽根を広げそこから光を飛ばす。荒れた地はあっという間に整備されていった。一面に広がる緑、無意識に歩き出してしまいそうなくらい整備された道、どこからか聞こえる小川の音、小鳥たちの音色、平穏という言葉がふさわしかった。
「よし、こんなもんかな」
一仕事を終え、天使のように羽根をぱっと広げてみた。そよ風と小鳥の鳴き声が心地よかった。その時、さっきまで困っていた彼から声をかけられた。必死に呼び止めようとする彼はあまりの急な出来事に戸惑っているようだった。私はさっきまで後をつけていたと言うわけにもいかず、隠すことにした。
「おや、こんなところでどうしたの?もしかして、迷ったとか?」
まだ状況が飲み込めていない様子だったが、時間とともに少しずつ落ち着きを取り戻しているようだった。彼は最初、黙っていたが私を凝視するようになった。どうやら背中の羽根が気になるらしく、私の質問を忘れ羽根について聞いてきた。唐突な返しにそう来たか、と思ったが彼の真剣な眼差しに応えることにした。
彼と手を繋いで羽根を広げて宙に浮かんだ。私にとってはなんてことないことだが、彼は私の一つ一つの動作に目を輝かせていた。その姿はまるでジブリ映画に出てくる男の子みたいだった。あまりに反応が新鮮であったため照れてしまいそうになった。
これが彼との出会いである
君との旅のはじまりの日だ
君と旅立つ日だ
私は一生忘れない
この出会いがなければ私は救われなかったのだから
「君と飛び立つ」
「はじめまして」の彼女視点です。
8/21/2025, 1:56:46 PM