流るくらいかわの向こう岸にかろうじて見える人影は何かを持っていた
暗さになにかはわからない
ただ寂しさだけがその空間を埋め尽くしていた
4:30
アラームの音で目が覚める
夢を見ていた
どんな夢だったのだか、思い出すために、また夢の中へ戻るために閉じたくなる目を痛くなるほどに擦り付ける
このまま眼球が取れてしまえば夢は見れなくなるのだろうか
何も関係はないのだろうか
しんとした部屋
私が動かなければ音のない部屋で
なるべく音を立てずに身支度をする
顔を洗い、歯を磨き、制服へと着替えて髪を結い上げる
4:55
あと10分
タバコを吸うのには十分すぎる猶予である
ジッポを回し、石が打たれ、火が灯るとそこにはオイルの匂いが充満した。
すぐに苦い匂いにかき消されてしまうその匂いを腹一杯に吸い込んでから、口元を近付けた
5:03
この八分間の記憶はない
ただ、燃えて短くなったタバコと、目覚めたときよりもコントラストのはっきりとしてきた室内が時間の経過を表すのだ
最後の一吸いは味わうこともなく、灰皿に押し付けた
5:04
鍵を手に取り、カバンを肩にかけ、つま先を靴にすべりこませた
5:05
分厚い金属の向こうには、まだ静まり返る冷たい世界が待っていた。カギをしめて、階段を降りる
耳にイヤホンを詰め込み、ちょうど駆け込んできたバスの中へと飛び降りた
8/7/2024, 1:19:39 PM