kurera

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風のいたずら

ぶわ、と目の前を突風が通り過ぎた。今日は晴天ではあるが風が強く冷たい。肩を竦めながら風に逆らって歩く。天気予報の気温よりかなり寒く感じる。
「すみません!」
声と同時に風に乗って紙が飛んできた。どうやら楽譜のようだ。咄嗟に楽譜を拾って声の主に渡すと、長い髪をなびかせた彼女はそれを受け取りにこりと微笑んだ。
「ありがとうございます、助かります」
「練習頑張ってください」
どこかで見たことあるような彼女に別れを告げ、また風に向かって足を踏み出した。
後日、テレビの中で飛ばされた楽譜について話すアイドルを見て、ようやく気づいたのだった。

1/17/2025, 8:39:03 PM