『目が覚めるまでに』
控えめにスマホの目覚ましの音がなって、夏目は隣りに眠る雪村を起こさないようにそっと起き上がった。
日曜の朝なので、まだゆっくり寝ていてもいい時間。
午前5時。
夏場とはいえ、カーテンの隙間から覗く窓の外はまだ明るさが足りない。
ベッドから降りるとそばにある棚から細く長い紐を手に取った。
振り返って見ると、雪村はタイミングよくコチラ側へ寝返りを打つところだった。
「起きないでよ、悠人さん、、、」
囁くように言いながら、夏目は手に持った紐を雪村の左手薬指に巻く。
「、、、もう、腹いっぱい、、、」
突然、雪村がしっかりとした寝言を言ったので、思わず吹き出しそうになって、肩をふるわせた。
よし、OK、、、。
そして、そっと指から抜いた輪っかになっている紐を崩れないように小さなビニール袋に入れて、大事に財布にしまった。
ーあれから1年か、、、。
シルバーリングが光る雪村の左手薬指に口付ける。
夏目の隣りで眠る雪村は規則的な息づかいを繰り返している。
カーテンの向こうは少し明るくなってきているが、雪村はまだ目覚めなさそうだ。
時間まだ早いけど、シャワーして朝ご飯作っちゃおうかナ、、、。
そして、布団から出ている雪村の白い肩にキスをした。
8/4/2024, 7:28:46 AM