【夫婦】
私の家の夫婦が瓦解したとき、数年の時を掛けながら私の大人への信頼は全て塵と化した。
小さい頃は、大人は安心しできる場所で、頼れる場所だと思っていた。全幅の信頼を置いても、それ以上を返してくれると思っていた。けど、それは違った。
その安心は夫婦を取り巻く周りの緻密な計算によって生み出されていたままごと、立派なハリボテだった。
小三の頃、親が離婚した。
私は母へ着いて行った。
母が言った。
お母さんはシングルだから、舐められる。 と。
私は従った。
9歳の決心だった。
今にも崩れてしまいそうな母を1秒でも早く、幸せにさせて上げないといけなかった。
11歳の時、母が言った。
恥ずかしい事をしないで、教育が行き届いてないように見えるから。
私は従った。母を幸せにするために。良い子であるために。
12歳、中学受験に失敗。母に恥をかかせた。
シングルだから、周りを見返さないと行けないのに。
母は私に落胆した。
私に掛けた金が、溝へ消えたと。
もしかしたら既にこの時から、大人を信用出来ず、嫌悪の対象だったかもしれない。
中学生。
あのお家はあぁだから。
このお家はきっとこうだから。
お母さんはこんな仕事してるから。
こうでなければいけない。こうあるべき。
母は自衛と前進に勤しんだ。
ウチを見てくれる親戚は、遠い親戚だから。
ばぁばが死んでから面倒見てくれるようになったでしょ?
だからあの親戚は、お母さん達をかわいそがってるの。弱いと思われてるの。
だから、あれはしないで、これもだめ。
1番ダメなのはこんな事。
親は苦しそうだった。その分、私にも罪悪感が募る。
私がこんな事をしなければ、あんな事をしていれば、
こんな気持ちを親戚に明かさなければ。
親の相談なんて、しなければ。
辛かった。弱かった。だから、逃げ出した。
電気の着いていない自室、午後9時4分。
夫婦の瓦解から始まったこの話を思い出して、
私は今ここに書き記している。
11/22/2023, 12:04:50 PM