フィロ

Open App

今朝の俺は最悪な夢をみている途中で目が覚めた
もちろん、気分は最悪だった

その夢は、朝いつものバス停からバスを乗るところから始まった
乗ろうとすると、右足にネチョッとした嫌な感触を感じた
ガムだった

「マジか~、朝から最悪だ」
と、この嫌な感触のまま1日過ごすことを考えると気分が滅入った

お尻のポケットに何気なく手が行った瞬間、次の「最悪」に気が付いた
会社のIDパスを忘れたのだ

「やっべぇ~、あれ無いと面倒なんだよなぁ
取りに戻るかぁ? でも、会議に遅れるしなぁ… 本当にツイてないわ」
と益々気分が滅入った


会社に着く前に毎朝同じコンビニに寄ってコーヒーを買うことにしていた
何故かそこのコンビニにしか置いていないマイナーなコーヒーが最近のお気に入りだった

「あれ飲むと気分上がるんだよな♪ ヨシ!気合い入れて気持ち切り替えるか!」
とガムの嫌な感触をあえて楽しむかのように力強く踏み締めながらコンビニの中へ入った

「えっ?! 何で、何で? あのコーヒー1本も無いじゃん! 今までそんなこと無かったじゃん 他のが売り切れでもこれが無いなんてこと無かったじゃん」

そこには貼り紙がしてあり、
「商品の製造行程に不具合が見つかり全品回収になりました」
とあった

「そんなことある~? 今日に限って? 他の日ならまだしも、今日の俺にはアレが必要なんだよ~! 本当に、ホトホト今日はツイてないんだな…」


最悪に最悪が重なり、地面にまでのめり込みそうな気分で会社へ向かおうとすると、携帯が鳴った

「お前、今どこにいるんだよ?」

と同僚からの慌てた声が聞こえた
「もう、とっくに会議始まってるぞ!お前今日はプレゼンだよな?」

「えっ?だってまだ時間じゃ…」

「メール見てないのかよ?1 時間繰り上がったんだよ」

「そ、そんな… 直ぐ、直ぐに行きます!!」

何でなんだよ!これが最悪中の最悪じゃんか!
どうなってんだよ、俺?

と何が何だか分からず気が動転しながら慌てて横断歩道を渡った
もう何も聞こえず、何も見えなかった

もの凄い衝撃だけが体に伝わった



「何だよ、夢かぁ それにしてもすんごいリアルだし…
こんなに最悪な気分の夢は参るよなぁ」


あれ、あそこで寝てるのは俺か?
何してるんだよ、家で寝てたはずだろ?
それに、何で俺が俺を見てるんだ?



「先生、この患者意識戻りますかねぇ」

「かなり厳しいだろうな…
ダンプにぶつかったんだろう そのまま逝かなかった方が不思議だよ」

「そうですよね 身元もまだ分からなくてご家族に連絡も出来ないんですよ
携帯も破損してしまっていて せめて会社のIDとかあったら良いんですけどね」

「履いてた靴がさっき届きましたけど、靴裏にガムが貼り付いていて… なんかちょっとぐっと来ちゃいましたよ…
こんな最悪がまだ待っていたなんてね…」






『最悪』

6/7/2024, 5:32:28 AM