NoName

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「……なんで開けるの」
 突然照らした光から逃れるように顔を背けて、ブランケットを被った。四つ足の動物みたいに両手を付く犯人の気配を感じる。
「まさか、起きないの?」
 「もう朝だよ」。言いながら、その人も私の隣に寝転んだ。布の隙間から、明るい緑の差し毛が見える。ティナリは、早起きだ。森と同じ。それにまだついていけない私は、そっと彼の袖を摘んだ。
「起きちゃうの?」
「……」
 浅い沈黙が降りて、その間、ティナリはちょっと考えるように首を傾げた。そして短い逡巡を終えると立ち上がり、再び窓に近付いた。
「閉めるの?」
 私の問いかけに振り向く。そしてひとつだけ頷くと、小さく微笑んでカーテンを引いた。戻ってきて、私の体を覆っているブランケットを半分だけ開けて、そこに体を滑り込ませる。
「君がいるなら、僕もここにいようかな」
 嗚呼、せっかくの休日が。あなたと一緒に溶けていく。

7/1/2025, 7:05:43 AM