寂れたバス停でキスをした。
さんさんと光る青空の元、触れるだけのキスをした。
カサついた唇の彼女にそっとリップクリームを塗ってやる。少しよれてしまったので謝りながらまたキスをする。
鮮やかな向日葵がこちらを覗き込んでくる。
彼女の髪の毛が風に揺れ顔に掛かった。そっとよけて彼女の目を開かせる。
私しか見えないその瞳孔は、まるでコーヒーのように黒々として。
私しか映してない。
その事実に笑みを浮かべる。
もう私だけのもの、あんな男なんかに渡さない。
私の可愛い可愛い、優しい妹。
汚らわしい、あんな男に。
彼女の顔を撫でる。
ベタベタとまるで精液のように纏わりついた、あの男の醜い残骸を拭うように。
蝉が鳴く。そろそろバスが来る頃だ。
もう動かない彼女の唇は私の願う言葉しか吐かないだろう。
「しょうがないわね、お姉ちゃん」
ああなんて優しい妹なの。もう一度抱きしめ、木箱に彼女を入れる。
海に行きましょう。ここは山ばかりだから、私海が見てみたかったの。貴方も同意してくれるわよね。
抱えた木箱に頬擦りをする。
カタン、同意の音がした。
2/4/2023, 10:28:56 AM